結論から先に書くと、一人当たり年間約57,000円の負担増。1世帯4人とすると、年間228,000円の負担増。これは年収600万円の所得税くらい。以下はその試算:
まずはコスト増について。磯崎哲也さんのメルマガ週刊isologueの2011.04.04(第105号)「東京電力(ビジネスモデル編)」より
セグメント別の営業利益の推移は下記の通りです。
図表12.事業の種類別セグメント営業利益の推移
一番大きく変動しているのが、H20年3月期ですね。
この年は、電気事業の営業利益が4,319億円も下がってますが、これは有価証券報告書によると、「柏崎刈羽原子力発電所の運転停止などにより,燃料費や購入電力料が大幅に増加した」ものである説明されてます。
新潟県中越沖地震は、平成19年7月16日ですので、柏崎刈羽原発は、平成20年3月期はほぼ3四半期、その次の平成21年3月期は1年間まるまる止まっていたわけです。
(もちろん、電力需要量の変化や、石炭やLNGといった他の燃料の単価の変動も含まれますが)、電気事業にかかった営業費用は、平成20年3月期、平成21年3月期それぞれ、平成19年3月期比で、6487億円、1.1兆円も増えています。
連結ベースでは、費用の内訳があまり細かく出ていませんが、東京電力単体の財務諸表に詳しく出ています。
これらを抜き出してグラフにすると、下記のようになります。
図表13.受発電関連費用(単位:百万円)(出所:東京電力単体財務諸表より作成。)
上記は、受電・発電だけのコストです。
(送電・変電・配電や、販売費・一般管理費等は含まれていません。)
これによると、平成19年3月期に対して、平成20年3月期、平成21年3月期の営業費用はそれぞれ、7877億円、1.1兆円も増えています。
先ほどの数字と付け合わせると、ほぼピッタリ一致しますので、連結でのコスト増は、受発電のコスト、特に、汽力(火力)発電のコスト増によるものだ、ということがわかります。
原発を止めたので、原子力発電のコストも全く減ってないわけではないものの、減り方はわずかです。原発というのは止めていてもコストがいろいろかかりそうですね。
このように、柏崎刈羽発電所が止まるだけで、1兆円(!)単位のコスト増になるわけですから、今回のように、ほとんどすべて原発が止まってしまった場合には、もっとコスト増になることが予想されます。
と書かれております。
新潟の柏崎原発の総発電量は821万kW、福島原発は第一第二原発それぞれ併せて909万kW。総発電量から火力に転換した場合のそれぞれのコストを当てはめると以下
821万kW -> 1兆円
909万kW -> 1.1兆円
なので今後福島原発が止まると1.1兆円のコスト増、柏崎も併せて止めてると1.1+1兆円にて、実に2.1兆円のコスト増になりそうという風に考えられます。
電気料金制度では
発電、送電、配電にかかる原価を積み上げ、一定の利益(公正報酬)を上乗せして全体の費用を決め、それを個別の需要家ごとに配分して電気料金が決まる
とあることから、コスト増は電気料金へと反映されるので、コスト増についても各消費者への負担増へと繋がることになるでしょう。そんなの嫌だ!国がなんとかしろ!と言っても財源を確保しなければなりませんので、結局それは増税という形で支払うこととなり、あまり変わりません。
東京電力が電力を供給している関東全域の人口は日本の3分の1を占めているとされます。日本の人口は1.1億人なので3で割ると3666万人。約3700万人がおります。2.1兆円を3700万人で負担すると考えると、一人当たり56,756円となり、約5.7万円の負担となります。もちろん関東全域の全ての人々が働いているわけではなく、子供やお年寄りも含まれますから、世帯あたりどれくらいの負担増になるかを、1世帯につき4人家族の御家庭として計算すると、年間22万8000円の負担増ということになります。
実際には一般家庭で消費される電力というのは全体の3割程で、残りは工場やビルなどの工業商業施設で使用されますが、そちらの電気代も同様に上がることで、生活品やサービスの値段が上がったり、製造品のコスト増を防ぐために働いている人の人件費が削られたりという影響が考えられますので、巡り巡って家計に反映されると考えると上記の年間22万8000円の負担増になるんじゃないかな?といったところです。
で、これは東京電力の場合をもとに試算した数字です。
全国規模で原発廃止に動いた場合、火力に必要な原材料の値上がりはさらに進み、もっとコストが増えることが予想されます。そうすると日本全国で上記のような負担増が発生し、国民全員に対し毎年5万円を超える増税のようなものが課せられるということになります。国民の中にはギリギリの生活費でやりくりをしている人もいることでしょうので、もしかすると生活保護が必要な人が増え、国の負担も増えることからさらなる増税もありえるかも知れません。また、電気代や増税により収入が減ることによって景気が冷え込み、個人の収入の減少、負のスパイラルに突入することも想像に難くありません。
震災から復興を目指す日本に対し、上記の負担増は果たして辛い足枷にならないでしょうか?
現在は震災後の問題が山積みの状況です。まずは復興が大事でしょう。そのためには、自分がどれだけのコスト増の重みに耐えられるかを計算し、反原発に動くにしても、かなり長期的な計画を立てて、国民負担が最小になる形で進めていかなければならないでしょう。感情的に反原発を叫び、すぐに原発を止めだすことで、この国はより大きな「お金」という困難を生み出すこととなります。ただでさえ借金の多い国の財務状況ですから、国家破産に繋がる恐れもあります。
ここは冷静に考え、そのような酷い状況に陥ることのないよう、国民の一人一人が冷静に判断しなければならないと思います。
※電気代払うのって20歳以上くらいからなので、そうなると関東の0〜20歳人口は700万人程度。3700-700にて、3000万人で負担すると考えると一人当たりの負担額は7万円となるかも。。。
でまあ、上記の金額って単年度だけでこれなんです。柏崎刈羽原子力発電所が止まった時は1兆円のコスト増に加えて、東京電力は利益剰余金を6500億円切り崩して頑張ったわけです。現在、東京電力は株価の大幅下落により、実に2兆円の時価総額を損失しております。株主資産は2.5兆円あったのですが、そこから2兆円失ったと考えると、前回のような利益剰余金の取り崩してしのぐということが無理になります。今後福島と柏崎が停止したまま日本が反原発に動いたとすると2.1兆円のコスト増。今後原油や天然ガスの需要増によりコストも増えていくため、何年先に予想されるコスト増はこの限りではありません。また、そのコスト増を低減するための利益剰余金も残らない状況です。国の未来を考えると、本当に反原発でやっていけるのでしょうか?東北の復興費用もかかります、民主党政権により過去最大の国債発行もしております、また(アホな民主党政権によって)平成23年度からガソリン税が最大で5割増税になっております。
お金の計算をちょっとでもすれば、日本の将来のために急に反原発に動くのではなく、やはり暫くは落ち着くまで冷静に行動した方が良いと思われます。
※火力発電の方が原発の半額のコストという意見も反原発の人々からあるんですが、えーっと、柏崎刈谷止めて火力やったのに利益剰余金6500億円捨ててまで東電は火力の方が高いって証明しなきゃならなかったのでしょうか?民間の企業って利益上げるのが基本ですよ?にもかかわらず6500億円の金をドブに捨てるんですか?正気ですか?本当に火力のコストが半額なら利益剰余金が増えてたわけだし、コスト1兆円増えるどころか、削減出来たんじゃないですか?で、余った金で政治家にロビー活動して、今頃もっと利益だして原発の被害額もちゃっちゃと払えてたんじゃないですか?正気ですか?
2 件のコメント:
> 冷静に判断しなければならない
はごもっともです。
一時的な感傷で物事(自分に影響するものを含めて)を決めてしまうのは危険で、結局、原子力の問題が他の問題になるだけです。
その判断材料を提示していただいて感謝します。
数字に弱い人ほど、数字に拘るから、この説明は説得しやすい。(^^)
bitさん
感情的にすぐに出す結論ほど危険なので、具体的な数字と共に冷静に考えようとこの国の未来の為に提言してみたした。
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