2009年10月25日日曜日

保険:民間の保険会社の怖さ(見直しは慎重に)

保険に関する話

実際に病気になって入院した人が複数の医療保険に入っていたりすると、横並びでどれも同じでしょ?と思っていた各社の保険商品が、いざって時にいくら支払われるかという比較が良く出来る。

ありがちなのが、社会人になって会社にやって来た保険のセールスの人によって加入した保険とかTVのCMを見て入った保険と、親が子供を心配してかけていた保険。

親が心配してかけていた保険で多いのは郵便局の簡保とか、日生とか、合併前の明治安田とかあの辺のもの。で、こういうのは親が加入させていたので、その商品が作られた時期も古い。しかも、死亡保障が主で、いわゆるオマケ扱いの特約で入院保障がついているものが典型例。また、解約時の払戻金が多い養老保険と呼ばれる、貯蓄目的の月々の払込金が多い割には実りの薄い商品:典型例では簡保の養老保険だったりする。もっともバブル期の簡保は払ったお金以上の金額が戻って来るという、そりゃあ民間の保険会社もバブルが崩壊すれば倒産しますわな、、、って物が平気で売られていた。消費者にとっては古き良き時代ってもんである。

保障の話だ。

古い(親が子供にかけていた)保険の場合、作られた時期もあって入院保障はあまり考慮されていない。例えば入院5日目より1入院当たり5000円出ます、と言うものが多い。最近は技術も進歩して手術が必要な状態になっても、日帰りで可能なものや一週間もかからずに退院出来てしまうものが多くなって来た。そこで最近の入院初日より保障される新しい保険と古い保険とで保険金の請求をすると、後日えらい金額の差になって銀行口座に振り込まれる。

日額5000円で5日目から支給の保険と、日額1万円で初日から支給の保険の場合、1週間入院すると、それぞれの支給額は前者:1万円、後者:7万円である。一ヶ月(30日)入院すると前者:12万5000円、後者:30万円である。

古い保険は保障内容がしょぼい上に、毎月の支払いも大きい。死亡保険と入院医療保障特約のセットになっているので入院保障だけが欲しい場合でも解約しにくい。一方最近の保険は医療保障と死亡保障などでそれぞれの保険がバラ売りされているので、必要に応じて保険が選べるし、余計な保障がある場合は、その部分だけを解約しやすく出来ている。なので、前者は毎月1万円払っているのに、後者は毎月2500円、しかもいざって時の保障内容は後者の方が倍以上でかい!なんてことが発生する。

じゃあ、お金の無駄なので古い保険は解約すべきか?というと、さっきも言ったようにバブル期頃の保険は払ったお金以上のお金が加入者が死のうが、保険の満期になろうが、どちらの場合にせよ戻ってくる契約内容になっていたりするので、殆どの人の場合そのまま継続している方が損が無い(保険会社にとっては損だけど)。ってなわけで、一概に古い保険で保障内容がしょぼいからという理由で解約すると、加入者にとっては損をする状況にもなりかねない。



保険会社が損を取り戻す為にやって来たこと

しかしながら、これらバブル期の保険会社が損をしてしまう保険商品は、保険会社の大量倒産を生み出した。よって、これらの商品は保険会社によってどうにかしなければならない問題になった。そこで保険会社が考えて取った行動は、実に酷いものだった。

まず既存の保険よりも保障内容が良く、また解約返戻金が殆ど無い商品を作成する。そして保険会社にとって不利な条件の契約者の所に行って『今度、保障内容がより良く、さらに月々の掛金が安い新商品が出たんです。』と言って回る。普通に聞けば、そんな良い条件の商品なんて存在しない。払う金額が少ないのに、なんで保障が上乗せされるんだ?と。カラクリは、加入者の貯金に手を付け、それを奪うこと。

バブル期の保険の掛金が高い理由の一つは積み立てに回される金額が大きいことにある。保険の掛金の中から保障に必要な原価的な部分を差し引き、そこで残った大部分の現金を投資に回す(投資先内訳は:ちょっとの株、多めの債券、不動産)。ここから生まれる利益を保険会社がある程度頂いた後に、残りを加入者に還元する。バブル期の保険は利回りが5%以上とかいうものがあったので、当然それ以上の利回りで預かったお金を運用しなければならない。ところが日経平均は3万円から1万円以下に。東京の不動産価格は億単位から数千万円まで、債券の利回りは1%未満への下落である。これでは加入者に約束した利回りが払えるわけがない。

ではどうするか?既存の不利な契約を消さなければならない。しかも、可能な限り早く。

そのやり方は?

まず、既存の契約をより良い商品が出たという理由で解約させる。解約する時には契約に基づいた解約返戻金を返還しなければならない。バブル期のそれは高利回りを約束していたので結構高い。それをそのまま契約者に返せば保険会社が赤字となる。それでは困るので、その解約金を奪うことで、保険会社にとっての『お客様にセールストークで使える良い商品』が生まれる仕組みを作った。

考えてもみて欲しいが『今度、保障内容がより良く、さらに月々の掛金が安い新商品が出たんです。』なんてのはあり得ない。保障内容を良くし、掛金を下げるのは、一から会社を作り直しでもして運営全体を見直し、経費を切り詰めなければ不可能だ。

ではどうするか?保険会社は、加入者の解約返戻金を加入者に返すのではなく、そっくりそのまま頂き、それを使って『保障内容がより良く、さらに月々の掛金が安い新商品』とやらの支払いに充当させることにした。それによって、より良い保障を毎月の支払いがより少ない金額で提供出来るって話。

つまり、古い契約にあった加入者の貯金に手を出し、それを使ってしまうにも関わらず、あたかも保障内容は自分達が努力して安くしました風に見せることで、実際にはより高い商品を売りつけ、さらに契約内容も保険会社にとって都合が良いものに(解約返戻金の利回りが無いものに)書き換えたわけだ。

こうして消費者の利益は都合よく民間の保険会社を守る為に奪われましたとさ。めでたし、めでたし。


まあ、そんなことを考えると、最近『保障内容の見直しの為にセールスレディーが加入者様を訪問させて頂いております』なんてCMを見かけるたびに、あなた方は一体全体何を企んでいらっしゃるのでしょうか?という気分になってしまう。

なんていうか、怖い世の中ですね。

0 件のコメント: