2010年7月10日土曜日

ビタミンK欠乏で新生児が死ぬ確率

ビタミンKを与えなかったことでビタミンK欠乏性出血症で乳児が死んだというニュースが何かと話題になっているので、そもそもビタミンK欠乏性出血症で死ぬ確率はどれくらいだったのかを調べてみた。

国立保健医療科学院にリンクのあるこちらの論文:「乳児ビタミンK欠乏性出血症の疫学 わが国における乳児の脳血管疾患による死亡の地域別年次推移に関する分析(PDF)」によれば、1万人の新生児に対し、脳疾患で死亡する確率は0.58〜0.37で、平均的には0.47人/1万人程度。

Wikipediaによれば日本の交通事故死は2009年度で4914人で、人口1億2000万人とした場合の1万人当たりの死亡者数は0.4人/1万人程度なので、新生児を脳疾患で亡くされる人は交通事故にあったようなもの。滅多に無いけどゼロじゃないよ、と。

ビタミンKを新生児に与えることにより、乳児ビタミンK欠乏性出血症発生は下がっているというのが現在の共通認識のようだけど、そもそも初めから死ぬ数も少なかったようで。じゃなきゃ、ビタミンK発見以前の新生児はみんな脳疾患で死んで、人類は滅亡してるよね。

一方で、ビタミンKを新生児に与えなかったことが原因で新生児が死んだって騒ぐと、今度は新生児を抱えた母親が子供にビタミンKを与えなきゃ!と焦って、ビタミンK補給のためのK2シロップを必要以上に与え壊死性腸炎を招いたりする可能性も上がるんじゃないか?という余計な心配も始まります。

ビタミンK欠乏性出血症で死んだニュースでこれほど騒げるなら、同じ死亡率を発生させている交通事故のニュースを見て、今すぐ車にのるのをやめさせなきゃ!と騒がないと変に思うのだけど、死亡率一緒なのに、そんなことにはなりませんね。(交通事故死亡率減らすためにどんだけお金使ってると思うの?一緒にしないで!という意見もあるけど、国の社会保障費の中で医療費に使われる金額は今や毎年35兆円超ですので、医療はもっとお金掛かるんですよ?という状況。むしろ、この財源負担で国民の生活が苦しくなって、死亡率上がるんじゃないかと思えるレベルですね。)

既に実績が認められている適切な医療行為が行われないのは問題ですが、一方で多くの人々があまりにも騒ぎ過ぎて、また国が余計な規制を作り、医療費増加やら余計な管理機関やら天下り先やらが増えて、余計な増税や国家の借金に繋がる方が損だと思わないでもないです。


基本、現在新生児へのビタミンKの投与については通常の病院で普通に出産する場合においては、全ての新生児に対して行われるようになっているので、上記のような脳疾患の発生は殆どありえないレベルです。なので、一般的な病院で普通に出産する人々は新生児のビタミンK不足については悩まないでも適切に処理されるのでご安心ください。逆に適切な医療行為を行えない助産師に出産を任せるリスクを敢えて犯してまで通常の病院で出産しないのであれば、もはや自己責任ではないかと思わないでもないです。こういう人って、アマゾンの奥で現代社会の人が医療行為をしようとしても、村の呪い師の言う事の方が絶対と信じていて、敢えて言うことを聞かずに助かる可能性を潰すようなもんですから。

なお、上記の「わが国における乳児の脳血管疾患による死亡の地域別年次推移に関する分析」の論文が出たのは1986年であり、昭和61年のことなのですが、内容を読めばこの時代はまだビタミンKの新生児への投与に関して、本当にその有益性があるのか医療現場でも懐疑的な意見も多少あったことが分かります。論文を紐解くと1970年から1990年代にかけてビタミンKの有効性が議論され、現在ではそれが確実に認められた上で新生児へのビタミンK投与は当たり前のように実施されるようになりました。なので、コメントにあるような昭和60年のビタミンK投与が実施されなかった例を責めるのは、当時はまだその医学的有用性自体が検証段階であったため、一概には適切な医療行為が行われなかったと責めるのは難しい事例かと思います。それこそ、何でありとあらゆる病気が克服できた未来に生まれてこなかったんだろう?と後悔するようなものです。こういう後出しじゃんけんで他人を責めるような人々って気持ち悪いですね。


2010/08/25追記:
なんだか、こうして国が動き出す雰囲気が出てますが。。。
厚労相、ホメオパシー効果調べる 研究班組織へ

ここからこうしたことを研究調査する機関として独立行政法人化とか、研究所を作ろうとか、下手すると必要以上に税金の無駄遣いになりそうな予感。そこまで面倒みてやらないと駄目なほど、日本の国民ってアホでしたっけね?民主党に投票するくらですから、きっとそうなんでしょうけど。。。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

このニュースが話題になっているのは、確率的な事でなく、明らかにビタミンKが欠乏していると診断された乳幼児にそれを与えなかった事が問題ですから、何が問題でニュースになっているのかを誤解して受け取っておられます。

ビタミンK欠乏である事が診断できないのであれば、ご指摘のとおり妙な騒ぎようですが、ビタミンKの欠乏を指摘できる状況で、それを補わなかった事による死亡ですから騒ぐのが当然です。

また、挙げられている参考文献についても因果関係の薄さを指摘する根拠に少々疑問を感じる部分があり、ビタミンKの効果を云々するに適切な文献とは思われません。

匿名 さんのコメント...

失礼します。
死亡の確率はどの様な大規模調査が行われて出されたのでしょうか?
医学情報を鵜呑みに「したくない」私ですので、ビタミンKの投与、不投与で生死が決まったかの様にされている報道に大きな疑問を持っています。

それを検証することは出来ません。ひとりの人間が同時に二つの事を出来ない、それをいいことに「やったなら助かった、やらないから死んだ」という断言はある意味、嘘か本当かも解らない事を知っていて言いふらすしても、それが鵜呑み国民には有効打となるわけです。

あ、ここで文句言ってすみません。
どこを検索してみても、あのマヌケな助産婦を血祭りに上げろという記事ばかりだったので。

べつにホメオパシーとは関係ないのですが、現代医学の独善封建制度にはがまんならんのでして。
こっちは絶対正しいからこちらのやることをしないのは全部間違っているとばかりに、ひとつの失敗でも見つけたらそれっとばかりに・・

匿名 さんのコメント...

昭和60年生後40日でビタミンK欠乏による脳出血で右前頭葉を失った次女は、身体の不自由と闘いながら、義務教育を卒業し単位制高校を5年かけてなんとか卒業した。

嘔吐を繰り返す症状から脳出血を疑い、総合病院を紹介してくれた小児科医、深夜の緊急手術を執刀し命を救ってくれた脳外科の先生への感謝の念は尽きない。25歳となった今も、典型的な前頭葉欠損の症状で、言語・意思・行動に障害をもつ知的障害者として療育手帳のお世話になっている。

母親は、自分の食生活がビタミンK欠乏を招いたのかと嘆く。
それにつけてもビタミンK投与によって防げるものであればと悔やまれる。